これは見えない戦争だ! 映画「希望の国」

September 26th, 2012
 『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『恋の罪』など、現実の事件を題材にした作品の数々で、"性"や"暴力"といったタブーに挑み続けてきた鬼才・園子温。新作を発表するごとに世界の映画祭を席巻し、『冷たい熱帯魚』で第67回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門出品、『恋の罪』で第64回カンヌ国際映画祭監督週間出品、そして前作『ヒミズ』で主演の染谷将太、二階堂ふみに第68回ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)をもたらした彼が、今回テーマとして選んだのは現在の日本が直面する最大のタブー"原発"だった。

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 舞台は東日本大震災から数年後の20XX年、長島県。酪農を営む小野泰彦は、妻・智恵子と息子・洋一、その妻・いずみと満ち足りた日々を送っていた。あの日が来るまでは。長島県東方沖を襲ったマグニチュード8.3の地震と、それに続く原発事故は、人々の生活をたちまち一変させる。原発から半径20キロ圏内が警戒区域に指定される中、強制的に家を追われる隣の鈴木家と、道路ひとつ隔てただけで避難区域外となる小野家。だが、泰彦はかつてこの国で起きた未曾有の事態を忘れていなかった。国家はあてにならないと言い、自主的に洋一夫婦を避難させ、自らはそこに留まる泰彦。一方、妊娠がわかったいずみは、子を守りたい一心から、放射能への恐怖を募らせていく。

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 「これは見えない戦争なの。弾もミサイルも見えないけど、そこいらじゅう飛び交ってるの、見えない弾が!」
その頃、避難所で暮らす鈴木家の息子・ミツルと恋人のヨーコは、消息のつかめないヨーコの家族を探して、瓦礫に埋もれた海沿いの町を一歩一歩と歩き続けていた。やがて、原発は制御不能に陥り、最悪の事態を招いてしまう。泰彦の家が避難区域となり、強制退避を命じられる日も刻一刻と迫ってきた。帰るべき場所を失い、放射能におびえる人々。終わりなき絶望と不安の先に、果たして希望の未来はあるのだろうか?

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 東日本大震災直後に撮影された前作『ヒミズ』で、「3.11」後の希望を謳いあげた園監督が、あの日から1年以上を経た本作で暴き出すのは、震災後の日本が直面した過酷な現実の姿だ。実際に被災地で取材を重ね、そこで見聞きした事実をもとに描かれる今回の物語は、フィクションでありながら、未曾有の事態に巻き込まれた人々の"情感"を克明に記録する。かつて今村昌平や大島渚ら、日本の巨匠たちがえぐり出したように、この映画は社会を鋭く切り取ることで、そこに暮らす人々の"生"や"尊厳"を鮮やかに描写している。クリント・イーストウッドやスティーブン・スピルバーグらの名を挙げるまでもなく、社会問題を通じて人間のあり方に迫るその手法は、もはや世界標準であるとすら言っていい。原発事故を題材に、多くのメディアが報じながら、実際には伝えきれなかった人間の心に迫る、社会派エンタテインメントの傑作が誕生した。




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映画「希望の国」
10/20(土)より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!
©2012 The Land of Hope Film Partners
脚本・監督:園 子温
出演:夏八木勲/大谷直子/村上淳/神楽坂恵/でんでん/筒井真理子/清水優/梶原ひかり

製作:『希望の国』製作委員会
製作国:日本/イギリス/台湾
上映時間:2時間13分
共同製作:Third Window Films Joint Entertainment International
配給:ビターズ・エンド 宣伝:メゾン




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